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以下転載:http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/QJ/index.html
イエヒメアリ
体長2-2.5 mmの黄色から赤褐色の小さなアリです。世界で最も有名な家屋害虫の1つで、エジプト原産の熱帯性のアリと考えられていますが、古代から人や貨物の移動に伴って生息域を拡大し今では全世界に広がっています。もともと熱帯原産なので、温帯や冷帯のような冬期に氷点下になる寒冷な地方では越冬ができませんでした。このため日本の自然状態での棲息地は、関西から九州にかけてでした。しかし、最近大都会の建物は大型化し暖房が完備したため、関東地方でも高層ビルやマンションに棲みつくようになって、大きな被害を引き起こしています。
このアリは、1つの巣のなかに多数の女王アリがいて常時卵を産み、屋内にこれと対抗するアリがいないため、短期間に爆発的に繁殖して数万匹にも達します。例えば、数階建てのマンションなどに侵入した場合、2-3年で全室に広がるという凄まじさです。床と壁の縁のような、ややうす暗い所を行列して台所や食堂あるいは茶の間などに入り、肉・魚肉・チーズ・バター・パン・砂糖・菓子などを片っ端から食害し、衣類などに穴を開けることもあります。アリの行列に殺虫剤を噴霧して殺しても、1つの巣に何万匹も働きアリがいるので、次々に新手が繰りだしてきてなかなか絶滅できません。また、壁の亀裂や壁と柱の隙間など1 mmぐらいの狭い空所の奥に巣を作るため、室内を殺虫剤で薫蒸しても効果がありません。あまりの被害に引っ越したり、家主との間で訴訟沙汰になった例もあります。また欧米では、建物そのものを放棄した例も知られています。
日本では数年前に新型の殺虫剤が登場しました。それは固形の餌に遅効性の毒を混ぜた毒餌を働きアリに巣まで運ばせ、女王アリや幼虫が食べてしばらくすると全員が死ぬという画期的な商品です。以前は劇的に効果があったようですが、最近甘いものを好むアリにも効くように甘味添加物を混ぜたところ、肝心のイエヒメアリが餌として運ばなくなりほとんど効果がないとの情報が多数のユーザーから本データベースに寄せられています。そこでメーカーは、甘いものが好きなアリ用と肉が好きなアリ用に毒餌を別の皿に分けた製品を販売していますが、効果のほどはまだわかりません。皆さんからの情報をお待ちしております。
ということで、現在画期的な退治方法は確立していませんが、このアリは数が多いこと、壁の隙間の奥に巣を作ること、肉食性が強いなどの特徴があります。今考えられる有効な対策としては、
(1)台所や食堂を清潔にしてアリの餌になる食べ物が床に散乱しないようにする。飼育中のイエヒメアリの実験では、約1000匹の働きアリと12匹の女王アリを含む人工巣で、週2回手の平に軽く一杯ほどの虫(粉蛾30匹とミールウォーム3匹)を食べ、一月の間にアリの数が倍に増えます。また、体が大きい雌アリと雄アリが成長するときは、さらに多くの餌が必用になります。逆に言えば、それだけの餌がなければ巣は維持できないわけです。(2)アリが出て来たら、こまめに根気よく殺虫剤で退治する。
(3)アリの出てくる壁や柱の隙間などを突き止め、ノズル付きの噴霧式殺虫剤を隙間の奥まで散布する。
(4)マンションなど集合住宅の場合は、住人が協力して一斉に上記のアリ退治を行う。一室だけ駆除しても、隣の部屋に巣を移動させてまた繁殖するので効果がありません。
久保田政雄、今井弘民
ヒメアリ
ヒメアリは頭と胸が黄褐色で腹部が黒褐色の体長1.5 mmほどの微小なアリです。イエヒメアリと良くにていますが、腹部が黒い点が特徴です。この種は日本固有種で、関東地方以南の日当たりのよい場所の石の下や枯れた草木の芯に孔を開けて巣を作っています。餌を求めて屋内に侵入し、砂糖・菓子・油・チーズなどの食品に群がり被害を与えます.どちらかというと肉や油を好み、スモークサーモンを切ったあとのまな板の上やビーフジャーキーの袋、さらにオリーブオイルを原料とした高級石鹸をかじった例が本データベースに寄せられています。また、人体にも這い上がって、乳幼児などの皮膚のやわらかい部分を刺すことがあります。チクリとした痛みがあり、痕が赤く小さく腫れます。
イエヒメアリとよくにた形態と習性を持っていますが、イエヒメアリが最初から家屋専門に巣を作るのにたいして、ヒメアリは本来家の周りの自然環境に s生息していたものがたまたま屋内に侵入する点が違います。ヒメアリの方が集団で移動する性質が強いようです。というのは、斥候アリが絶えずうろついていて、どこかに餌か巣に適した場所を見つけると、道しるべ物質という一種の臭いを付けて巣に帰ります。するとその臭いの道をたどって仲間が一斉に行列を作って餌のところに集まったり(数分以内)、新しい巣に引っ越してきます(数時間から一晩)。また、巣にする場所も、イエヒメアリは非常に狭い隙間を好みますが、ヒメアリの場合は、まな板の上にかぶせた布巾の隙間とか、電話の受話器の中、あるいはパソコンのディスク内など閉空所であればどこにでも気軽に巣を移動させてしまうようです。特に電子機器の内部を好むのも特徴のようです(電子機器に侵入するアリ参照)。